Dr.MANAの南仏通信〜フランスのエスプリをご一緒に…〜
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機上のオーロラ紀行(2008.09.06)


Photo by ビューティサイエンティストのシェンカーさま

「飛行機っていいわよね。仕事の電話に追われる事もなく、何も考えなくていいのだから」
「しかも、天に近いっていうのかしら......とにかく脱日常で、インスピレーションが湧いてくるっていうか......」
今から3年以上も前、デザイナーをしている友人が嬉しそうにいうのを不思議な面持ちで聞いていた事があります。
なぜなら当時は、離陸時の加速感こそ大好きでしたが、長時間飛行につきものの沙漠並の乾燥に避けがたい足のむくみ、そして時差による疲労を毎回まじまじ感じ、自ら“飛行機に一度乗る度に○年老化が進む”などと信じこんでいたものですから。

でも根が単純な私は、エレガントな友人の発した一言でこれからは心がけを変えてみようとしました。
「そうね。機上の人は追跡不可能。なにより神様に一番近くなる瞬間かもしれないものね。イヤと思っても楽しんでも同じ時間だもの。楽しんだ方が得よね」

そうして、変化はすぐに訪れたのです。



非日常的な光景に出会える
  パリから東京に向かうフライト。食後酒を飲んでまどろみかけた頃でした。
薄目を開けるとCAが微笑んでこちらを向いているのがみえました。
「お客さま、お疲れのところ差し出がましいのですが、お休みになるのはちょっと後にして頂くといいかもしれません。現在、お客さま側の窓からオーロラがご覧になれますので」
「(☆0☆)! ほんまですか?」
生まれてはじめて! 一生に一度は見たいと思っていたけれど、厳冬の地は死ぬ程苦手なので先延ばしにしていたオーロラ......昔からの夢。
それが向こうからやってきたとは。

淡いクリーム地のレースのカーテンが、遠く厳寒の大地の上でゆうるりと揺れています。なんという壮大なスケールの天空のカーテン。
天が操る森羅万象のなせる技。人智を遥かに越えた美しさにコトバも失いました。
「どんなにか寒かろうと、今度は本当に会いにいくわ」

実はデジカメが手元にあったのですが、自分の頭の中にだけしっかり焼き付けることにしました。技術の問題だけではなく、わざと映像を頭の中の記憶のみにして、今後この思い出がより美しく編集され続けるのを楽しもうと思ったからです。小1時間もかけて眺めて、これで悔いなし。自分の心に決着をつけてからようやく小窓を閉じたのでした。

この感動を共にしたくて日本で何人かの友人達に尋ねました。

「ねぇ、機上でオーロラ、みた事ある?」
でも一人として“YES”の答えは返って来ませんでした。

そうだわ。彼女ならきっと知っている。パリに戻ってから、確信をもってくだんの友人に聞いてみました。
「オーロラ? たまに見えるっていうわね。やっぱり白っぽかった? 私も一度あるわ。アンカレジ経由の頃だったけれど」


冬にシベリア上空を飛ぶ機会のある貴方、暗闇の中で一度は窓を開け、確認してくださいね。もしかしたら壮大な光のベールの競演を見る事ができるかもしれません。