恋するアマルフィ
その目もくらむような断崖絶壁の
深く深く切り込んだ入り江に
小さな砂浜を見つけては歓声を挙げる
それがいくつもいくつも折りなす
崖の上から砂浜まで続いている
岩肌にへばりつく細い階段
気が遠くなるような高い吊り橋
岩礁の上の教会などを見つけては
また歓声を挙げるのであった
遠くの海は深い藍色
波が打ち寄せる砂浜は
目の醒めるようなエメラルド
このままずっと見続けると
自分の瞳の色も染まってしまいそう
この美しい海の色に
いくつかの急カーブののち
視界が突然開ける
白壁に映えるブーゲンビリアの花々
細い石段に連なるパステル調の家々
オレンジにレモン オリーブやぶどうの畑
もしここがあの場所だったら
もう少し先で振り返れば きっと……
車はどんどん街に吸い込まれていく
自分もこの光景に溶け込めたような不思議な幸福感
はやる心をおさえながら
集落の終わりに近づいたところでゆっくりと
ゆっくりと後ろを振り返る……
ああ やっぱりー やっと逢えた
私はずっと恋していたのよ
コステイエラ・アマルフィターナ
夢に見たあの光景がそのままに目前に広がる
太陽の国の歌うような言葉を聞きながら
フルーツと花と潮の香りの風に身をまかせ
しばらくぼうーっとたたずんいた
またきっとくる
何度も何度も私はここに来るわ
けれど……
視界のすべてを記憶しようと見つめ続けた
もう二度と逢う事の許されぬ愛しいその人の姿を
心に深く深く刻み込む時のように……