アルザス・ロレーヌのお国自慢(2006.12.22)
ドーデの『最後の授業』で有名なドイツに接するアルザス地方は、過去幾度か独仏間で揺れ動き、人種もゲルマン系が主でプロテスタントが多い、といった特徴をもちます。国境近くの美しい街、ストラスブールの小学校では、今でもフランス語とドイツ語が公用語だったりします。
さて、何年か前のクリスマス休暇に、Metz(以下、メス)の街に住む友人のフランス家庭に招かれたことがありました。
私は密かに大喜び\(^O^)/
だってメスからストラスブールまで、小1時間くらいのはず。ストラスブールのクリスマスのチャーミングさって、とっても有名だし♪
ところが友人宅の宴で早くも雲行きが怪しくなってきたのです。
『ストラスブールってそんなに日本人に有名なの?』
そうですねぇー。きれいなプチ・フランスの街並があるし(あれ? マダムの顔つきがこわいぞ)。あーーもちろん、メスも知ってるかと……ストラスブールほどではないですがぁ……まぁそこそこ……。
『ああ、プチ・フランスね。キレイっていってもほんのちょっとよ。名前どおり、プチ・プチね(ゼスチャー入り)。いまの時期はそこに人が集まっちゃって、とても歩けないんだから……』
……。…………。
『そうそれに、コトバも訛っててドイツ語みたい。アルザシアンっていうのよ(まねをする)。シュークルートって食べたことある? 太いソーセージがでーんでーんに、酢キャベツてんこもり。まったくあそこはドイツよ』
……でも確か有名なゴシックの大聖堂があるんですよね。
『12世紀のね。ねえ、あれ塔が半分しかないのよ。変でしょー。実はまだ出来上がってないのよ。あっ、そうだわ。クリスマス市はここメスでもやっているわよ。イルミネーションもそこそこあるし。……えっ? それでも行きたいの? じゃ、子供置いていきなさいよ。あんな人混みのところじゃかわいそうだわ。迷子になったら大変! おまけにここよりずーっと寒いのよ。きっと雨が降るわ』
当日の天気まで断定されるって、いったい……。とにかく皆メスに残ると言うので、私ひとり、傘をもたされ行ってきましたストラスブール。
途中で雨はあがり、辿り着いた美しい街並はほどよい活気に満ちていました。なんとこの観光都市でも、クリスマスイヴで空いているレストランなんて殆どないのです。ようやく見つけたプチ・フランスのレストランで身体を温めましたわ。どんなにドイツっぽかろうが、せっかくなのでアルザスの伝統料理“シュークルート”をいただくことにしました。煮込みキャベツもお出汁がきいていたし、塩気ほどほどの巨大ソーセージもジューシーでおいしかったです。
そして私のホットワインとのはじめての出会いはここなのでした。仏語でvin chaud(ヴァン・ショー)、独語でグリューワイン。アニスやシナモンの香りが効いている、温かく甘いフルーツワイン。スペインのサングリアをあたためて香辛料をきかせた感じです。これが寒く厳しいアルザスの冬を乗り切る知恵かしら? なんでもスエーデン、ドイツなどの北の地方にある飲み方なんですって。……日本のおやぢの熱燗?
さて、美しいイルミネーションも満喫し、ホットワインで身も心もぽかぽかになって帰路に着きました。留守番組のお土産には、ココナッツとパンがまざったようなトラディショナルなお菓子にアルザスワイン。子供を見ていてもらったお礼をていねいにいい、マダムにお土産を手渡しました。
『ねえねえ。どうだった? ストラスブールは?』
マダムのおっしゃるとおり。確かにメルヘン入っててかわいかったですけど、寒がりの私にはちょっと。プチ・フランスもプチ・プチで(ゼスチャー入り)。そこに人がもの凄くて歩けなかったですぅ……そうそう、大聖堂の塔も1本しかなかったし。
『やっぱりね! だから言ったのに……でも実際行ってみないとわからないのよね。これで気が済んだでしょ?』
マダムの満足気な顔を見ながらアペリテイフをいただきます。
『……でも実は私、クリスマスシーズンのストラスブールって行ったことないのよね。ねぇ、やっぱ1度行ってみるべきかしら?』
…… (~o~)
運河沿いに並ぶ美しいプチ・フランスの街並。
メルヘン小国のかわいい飾り付け☆
レストラン『RESTAURANT-WINSTUB』。 右奥、イル川に浮かんでいるのは『クレッシェ』── キリスト生誕時の馬小屋での一場面を再現しています。
ノートルダム大聖堂の近くで見つけた路地の幻想的なイルミネーション。
クレベール広場のクリスマス市。 そういえばストラスブールはクリスマスツリー発祥の地でもあるのです。
これが“ホットワイン”の香辛料。アニスにシナモン♪
友人宅に遊びきていたジュリアン君とその妹。たくさんのプレゼントに大満足。 クリスマスは恋人たちというより、家族と子供のためのもの。
メスのご自慢、サントエテエンヌ大聖堂。おりしもロマンチックな雪が……。
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