村の人口100人にも満たない小さな小さな南フランスの村。3つ星レストランがあるわけでも有名ホテルがあるわけでもない。交通の便もいいとはいえない。それなのに毎年相当数の観光客が訪れ、この村を舞台とした本が各国で数多く書かれている。今回はこの村、レンヌ・ル・シャトーのミステリーです。 まだ『ダヴィンチコード』が影も形もなかった頃、ある早春に私はこの村を訪れました。もちろん当時、このシャトーを巡るミステリーを熟知していたわけもありません。この地方でその昔痛ましく抹消されたカタリ派の生き残りがいて、それがここの住人だとか、村人の顔だちが違うとかそんなことは聞いてましたが、それより周囲にある廃虚やテルマール(あるんです。こんなところにも)に興味があり、たまたま立ち寄っただけでした。 ところが、そのキッチュな感じの教会や司祭の部屋や図書室、時期外れの桜が満開の庭などを見ているうちに、めまいを覚えました。建物は古いし確かに地盤が傾いていたこともありますが、空気がちょっと違う。風水学をしている人はきっと何かわかると思います。なんというか、テーマパークのようなのです。生命の息吹が感じられない、生活感がないといったらいいのでしょうか。