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バーチャルフレグランスとともに(2008.9.10)
パレ・ロワイヤルの回廊、
それも人が惑うという夕暮れ時には魔法がかかる。
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香りはとても不思議だ
6000年の歴史があるのかどうか私には知る由もない
しかし香りとともに蘇るのは記憶や風景だけではない
情景、感覚、その時の気分・気持ちまで
ありありと思い出す
あの心細かったけど、どこと無く満ち溢れた思い
大人では味わえない感覚のような感じがする
ずいぶん昔だが、女のいる飲み屋で
いたく私の香りにほれた女がいた
それこそこの香りを手に入れるのなら
私の身体をあげても良いくらいの勢いと執着心を示した
私はたまたま小さなアトマイザーをバッグの中に入れていた
それを取り出した時の女の眼は猫が獲物を狙うような
輝きを放っていた
しかしその輝きは長くは続かなかった
私の体温は高い、だからなのかは解らないが
冬場や冷え性の女には重宝されるらしい
その飲み屋で女につけたら私とは全然違う
香りとなってしまった
随分疑われたが私が愛用しているものに間違いがない物だ
その女は冷たい.......体温が低かった
私の場合は多分アルコールが付けた瞬間に
飛んでしまうに違いない
香りのエッセンスが私に密着するのだろうか
それと私の汗やら何やらの肌からの分泌物と
その香りが妙にエロチックに有機的に
化合物となってしまうに違いないと思った
女の醒めた目は私を恨めしそうにただ見つめていた
でも諦めきれず、どこで売っているのかを聞いてきたので
世界でただ一箇所
パレロワイヤルのある店でしか売って
いない事を教えた
私はその女の顔は今全く思い出せない
by 夢丸
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