Dr.MANAの南仏通信〜フランスのエスプリをご一緒に…〜
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パリ・お散歩・パトロール バックナンバー

☆サン・シュルピス教会での懐(おも)い☆(2006.12.21)


日本で自他ともにゆるす神社仏閣フリークだった私は、こちらに住んで聖堂教会フリークへ自然にスライドしました。人々が願い祈る場に、共通する質感を感じるからでしょう。身体をしんなりと圧するようなそれを感じる時が、私はたまらなく好きです。
かすかな胎内の記憶の、薄明の、だからこそほっとできる閉じた空間。ステンドグラスから投げかけられる美しい光の帯、荘重なパイプオルガンの響き。この大気の中で、身体中の60兆の細胞のひとつひとつが、くまなく浄化されていく。とても錯覚とは思えません。
パリの街をのんびり歩いていて、尖塔を目にしたり、時を告げる鐘の輪唱を耳にしたら、教会との遭遇。まるで磁石に引き寄せられるように、私は門に近づき、重厚な木製の扉を押して、薄明の空間に身を投じるのです。
ローマ法皇から破門されたというラテン語でミサをあげる家の近くの教会は、買い物への途中にあって、なんど吸い寄せられて入ったかしれません。
えっ? 「なんじ、罪深き輩(やから)、懺悔せよ!」の声が聞こえたからですって? なんのことかしら?

そんな私のお散歩パトロールのテリトリーにあるサン・シュルピス教会に、いまだ足を踏み入れたことがなかったというのは、われながら不思議でした。思い返してみれば、すぐ近くをとおるときには時間にゆとりがなかったり、近くでの約束が直前でキャンセルになったり、そんなことが何度も重なって機会を逃していたのです。といって休日に訪れることを思いつきもしなかったのですから、今まではご縁がうすかったのでしょう。
けれど、風の吹くノエル前のある昼下がり、機が熟したとでもいいましょうか、私にもようやくチャンスがめぐってきました。打ち合わせからの帰り道、偶然にも前をとおりかかった私は、誰かが開けた扉の向こうから漏れ聞こえてきたパイプオルガンの調べに誘われるようにして足を踏み入れたのでした。



完成に130年以上費やしたしたというイワクつきの外観。



フランス最大級と称されるパイプオルガンの荘厳な調べが、
身体の中を振動して突き抜けていきます。
しばらく鳥肌がたっていました。


近くの庶民的で牧歌的なサンジェルマン・デ・プレ教会に比べ、
ここには人を寄せ付けない何か──厳格かつミステリアスなもの──が
息をひそめて存在しているような気がしてなりませんでした。


かのダビンチ・コードでシラスが辿ったローズライン
(教会側では「ローズラインと呼ばれたことはないし異教徒の教会があったこともない」と声明文を掲示してます)
の行き着くところである、巨大なオベリスク。
真実はどうであれ、想像力を駆り立てられるモノであるのは間違いないようです。


この空間の中に秘めやかに棲息している何か、
その具象化を目にしてしまったような気がして身震いがしました。
この影には、そのとき確かに命が宿っているように感じられたのです。



クリスマスシーズン恒例の『クレッシェ』と呼ばれる、
イエス生誕シーンの巨大オブジェが設置されてました。
これだけ立派なのは初めて目にしましたわ(*^。^*)



これは……あの有名なトリノの聖骸布の写真ではないかしらぁ!?
もうこの教会に入ってから、何回めの鳥肌かわかりません。


私はすんなりと外に出ることができずにもう1周し、目にうつるモノとうつらないモノ、それにオルガンの響きを、意識して身体に刻んで帰ってきました。パリは教会の街、ふとしたはずみで教会に辿り着きますが、またひとつ、私にとってのお気に入りパワースポットが増えましたわ。