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☆写真の情景(2010.9.27)
色褪せるこのなき一枚の写真
10年の昔に頂いた
緑蔭の香
さざ波の音
美貌の母の瞼を
水の光がゆらゆらと揺れる
印象派たちから愛されたこの地
人々は絵のなかのポジションに静止する
髪をあげた母の白のノースリーブ
幼い3人の子らのそれぞれ
麗しき清楚である涼しい目の先に
母はなにを見ているのだろう
女でなければ母にはなれないが
母は女であることをためらうもの
美しき母に息子は羨望し娘は嫉妬する
母の目の中にもう子らはいないかもしれない
生まれてから死ぬまで女は女でしかない
だから美しさは変わることない
子らはどうなったのだろうか
母といた水辺の淡粧濃抹
香りのメトロノーム
甘いぬくもり
彼らはきっと覚えているに違いない。
光景が情景に転じた刹那を
私はそっと写真を閉じる
《写真提供》by Ganchan
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