Dr.MANAの南仏通信〜フランスのエスプリをご一緒に…〜
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いまさら出版後記☆すっぴん肌力☆(2007.01.13)


在仏も気がつけば、そろそろ10年になります。もともとの専門である皮膚科学をベースに、欧米的美容医学や抗老化学を学んでブラッシュアップを図りつつ、日本の女性達を取り巻く環境の実情を外側から眺めて考察し、グローバルな視野での美に対する的確なアプローチの方法を、ずっと探って参りました。

日本における尋常を遥かに越えた美容情報の氾濫に嘆いたり苦笑いさせられたりしつつも、仕事柄、自らその状況に身を投じて検証していかなければなりません。そうした中で、さまざまな疑問が生まれてきました。
最近のヒット(!?)では、『フランスの洗顔法に学ぼう』『フランス女性のダイエット法』などです。──でも、ちょっと待ってください。若い頃はともかく、30過ぎたら日本人の肌の方がずっと綺麗ですよね? それに日本女性の方がフランス女性より、全般的に見たらどれほどスレンダーなことか……。そもそも“美容大国フランス”とはよく言われることですが、メイクやスキンケアにかけるお金や時間は、いったい日本の平均の何分の1であることか。それなのに名誉ある称号を世界中が認知している理由がどこにあるのか、まずはよく考えてみるべきだと思います。

フランス女性から学ぶとしたら、そんなミクロな視点にとらわれた部分的デジタル情報ではなく、マクロにとらえた統括アナログ的な『エレガントでシックなヴェールを身をまとった、堂々たる女の風格』なのではないでしょうか? 
確かに私もフランス式水なし洗顔法については提言したことはありますが、それは実際に水が合わないと考えていらっしゃる方か、例えば洗い過ぎで肌荒れをおこしてしまい、何かしらの改善策を考えていらっしゃる方のために言及してきたに過ぎません。日本であれフランスであれ、今実践している洗顔法でトラブルがなければ、その方法を続けていただければいいのです。
同じことは、言葉のもつ響きが斬新だったこともあってメディア発で流行った『肌断食』についてもいえます。日頃のスキンケアで問題がなければ、わざわざ飢餓状態をつくる必要もないわけです。逆にお肌に合わないコスメを使っていて、それを止めたら調子がよくなる──。これは接触性皮膚炎における皮膚科治療の王道です。日常のスキンケアでは話しがまったく別になります。
特にこちらの乾燥した空気の中で肌を飢餓状態におきますと、大きなダメージを受ける可能性もありますので、フランス在住の方はどうか御注意ください。

健康を意識するあまりに不健康になってしまう。同様に美肌を意識するあまりに不健康な肌にしてしまう。コスメフリークさん達や情報通の方のお肌が往々にして荒れてしまいがちであることを考えれば、感覚でおわかりいただけるのではないかと思います。
そもそもスキンケアやコスメにおける効果にはニッチというものがあって、限界があるのは当然のこと。コスメシューティカル製品(機能性化粧品)といえど、薬品ではありません。しかも、肌はひとつの臓器です。臓器である以上は健康であることが正義であり、体温や免疫のフィードバックのような身体のさまざまな他の機構と同じで、“美肌ホメオスタシス”ともいうべき、ある一定の状態を保とうとする、つまりは自ら健康で美しい肌になろうとする、自然の恵みともいうべき大きな力を持っているのです。その力を陰日向となりサポートするのが、スキンケアであるべきなのです。もちろん、ある程度の年齢を重ねれば老化に伴うトラブルが多様化するので、そこそこの有効成分入りコスメを使いたくなるのは理解できますし、否定はしませんが。
いずれにしても、角層が適度に潤っていること、バリアがしっかりしていること、これらが有効成分をしっかり活用させるのが大前提です。……あっ! バリアについては微妙ですが。


2作目となった本著では、日本の玉石混合といえる美容情報の渦に隠れてしまいがちなこうしたスキンケアの真実を土壌にして、コスメの正しい選び方や効果的な使い方、身体の内側から肌を綺麗にしていく方法、言葉や心から美を手に入れるおまじない(?)、癒されることで美しくなる実践ノウハウといった様々な花を咲かせたつもりです。できる限りシンプルで解りやすく、楽しみながら読んでいただける本になぁれと願いながら……。
健康であろうと心がけることこそ、美の錬金術。そこには何も特殊なことなどないのです。否が応でも戸惑いの中に放り込まれがちな多くの女性に、ぜひお手に取っていただけたら幸せです。
そうそう、本のタイトルは『すっぴん肌力』なのであって、『すっぽん肌力』ではありませんので、念のため……。