Dr.MANAの南仏通信〜フランスのエスプリをご一緒に…〜
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『時間から逃れようとすることには意味があるのだろうか?』(2008.06.17)


今年もバカロレア( baccalaureat)の季節が到来しました。バカロレアというのはフランスの統一国家試験のひとつ、大学入学資格取得試験とでもいいましょうか。フランスの大学は個別の入試がない代わりに、この成績がその後を左右するのです。それだけではなく就職にまで影響するわけですから、日本の共通一次……いえいえ、センター試験辺りとは似て非なるものです。
試験は高校の最終学年で必修科目となっている“哲学”から幕を開けます。点数はすべて20点満点で評価されるのですが、20点は過去に輩出したことがないといわれるほどの難関です。

今回のタイトル『時間から逃れようとすることには意味があるのだろうか?』は、過去問の中で、私の心に一番ささった命題なのでした。ナニゲに流行のアンチエイジング信奉が身を潜めているみたいに感じられませんか? こういうことを考えだすと、高尚な人間になったような錯覚を覚えます。

では、今年度(2008年)のほやほや試験問題一挙公開です。
\(o⌒∇⌒o)/

3つの中から1つ選んで論述せよ。制限時間4時間。

■文系(L)
知覚は訓練することができるか?
生きていることを科学的に理解することは可能か?
サルトルの『倫理学ノート』から抜粋して説明せよ。

■理系(S)
芸術はわれわれの現実の意識を変えるか?
実験の他に真実を証明する方法はあるのか?
ショーペンハウワーの『意志と象徴としての世界』から抜粋して説明せよ。

■経済社会系(ES)
苦悩なき欲望は可能か?
他人を知ることの方が自己を知るよりも簡単か?
アレクシ・ド・ドクヴィルの『アメリカン・デモクラシー』から抜粋して説明せよ。


……いかがですか?

ちなみに、自分だけの思考や思想で単純に完結するのではなく、歴代の思想家や哲学者の言葉などを引用しながら相反する論点を明確にしつつ、最終的に独自の解釈に落とし込んでいく、と最大公約数(採点者?)を納得させうるような構築と展開にしていかなくてはいけません。 これらに若干18歳になるかならないかの高校生が、ペン書きで取り組むのです!

フレンチコードのたかこさんが、リアルタイムで臨場感溢れるブログを書いていらっしゃいますのでご覧ください。


私も今後機会があれば、“哲学”をぜひ履修したいと思います。人間が人間たる本質を、先人の経験を足がかりにして追究していきたい。実のところ本音は、この屁理屈が達者……いえいえ、ロジカルなフランス人に口頭で堂々と張っていけるようになるために。( ̄▽ ̄)